Zwiftをやるにあたって、GROWTACというメーカーのGT-ROLLER F3.2というローラー台を買った。
ローラー台というのは、自転車をエアロバイク化するもので、ウォームアップや屋外で走れない時のトレーニングに使う。競輪選手が使うような「3本ローラー」と、ロードの選手が屋外で使う「固定ローラー」がその代表。
3本ローラーは前後輪のジャイロ効果で自立するから、前に進まないだけでバランスの取り方は実際と同じ。その代わりうっかりすると転倒するし、車輪は高速で回転しているから大変だ。それに音が喧しい。
後輪の車軸を固定する固定ローラーには、そうしたリスクはない。その代わり自転車もガッチリ固定されてバランス感覚は用がないし、ペダルに何かを引きずる抵抗を感じるだけで面白くない。あれはプロが高い意識を持って修行に使う道具だと思っている。
その点、GT-ROLLERは、なかなか楽しい。前輪を外してフォークを固定し、後輪を2本のローラーに乗せる「ハイブリッドローラー」。3本ローラーと固定式の折衷案のようなもので、左右に振れる後輪の動きは3本ローラーに近く、フォークを固定する支柱も前後左右に動くので、バランスを取りながらペダリングしている感覚も得られる。
これでZwiftのコースをポタリング感覚で2ヶ月ほど楽しんだ。自転車にスピードセンサーかパワーメーターが付いていれば、どんなローラー台でもZwiftはできるが、Zwiftに特化したような「スマートトレーナー」というものもある。略してスマトレ。
多くは後輪の代わりに装着するスタンドのようなスタイルで、トレーナー側のギアにチェーンをかけて駆動する。パワーの計測もできるし、コースの勾配と負荷の連動もできる。要するにZwiftの入出力に対応した自転車用インターフェースのようなものだ。
笑っちゃうのは勾配に応じて前輪が持ち上がったり、速度によって風力が変わる扇風機のようなオプションまであること。「うおおお、激坂苦しい」「空気抵抗があああ」といった、現実の道を走れば必ず巻き起こる悲喜交交の感情をネットサービスがもたらしてくれるのだ。そんなスマートって何だろうと思わなくもないが、VR的な演出としては王道だし、やってみたら多分面白いだろう。
それでもローラーの仕組みは固定ローラーと同じだから、自転車はトレーナーにがっちり掴まれたまま。そこは各社工夫を凝らして実走感を追求しているようだが、おおむねデカいし、試しに買うには値段も高い。その点、GROWTACはコンパクトで、日本製の割にそんなに高くはなかった。
そんなGT-ROLLERにも、別売の負荷ユニットを取り付けるとスマトレ化できるという。もちろんやってみた。で、今のところの感想は、やはり「スマートって何だろう」。
屋内サイクリングのメリットは、自分のペースで好きなだけペダルを回し続けられることだ、と私は思っている。公道に出ると信号や他の交通もあってペースは乱れるし、坂や風も同じように邪魔をしてくる。だから「ああローラーっていいなあ」と満足していた。そのメリットを台無しにする装置を、わざわざお金を払って取り付けてしまったのだ。
もちろんトレーニングにはなるのだろう。苦難は人を鍛える。ただ私は有酸素運動で気持ち良くなりたいだけの不届き千万な素人だ。慣れてしまえば脚にわずかな重さを感じるだけで現実の坂を思い浮かべ恍惚となれる、そんな日が来るのかも知れないが、今のところ苦しみの値が増減するだけだし、そもそも坂は苦手だ。
もう少し様子を見たい。