負荷バカ

 ローラー台に取り付けた自動負荷装置の要・不要問題。それを問題にしているのは私だけのような気もするが、それなりに「要」も見出しつつある。

 半固定式のGT Rollerについて、私はペダリングで重心が揺れるところにリアルさを感じていた。つまり固定式より不安定なのが良いのである、と。

 実際、下手をするとコケる。私はサドルを跨ぐ際に足を滑らせ、ローラー台ごと倒してしまい、GT Rollerの命であるモーションコントローラー、平たく言うとフロントフォークを支えるスチールの棒を曲げて、メーカー送りとなった。購入1週間目くらいの出来事であった。気をつけられたし。

 世間で言われる半固定式のメリットは「ダンシングできる」こと。要するに立ち漕ぎなのだが、私はやったことがなかった。負荷が軽いと、立とうとするだけでペダルが回ってしまい、腕とハンドルで身体を支えなければならないから。立ち漕ぎするなら手動で負荷を高くするか、ギアを上げる必要がある。だけど軽い負荷で楽できる。それがローラーの良いところではないか。

 人間というものは、わざわざ自分に試練を与えるような選択をしないものだ。立ち漕ぎなんて、世間に出ればいつでもできるじゃないか。苦労なんてシャバですればいいのだ。ゲームに課金までしてするものではない。

 そんな人間に対しても、容赦なく試練を与えるのが自動負荷装置だ。レース映像のような画面のせいなのか、放っておくとアバターにごぼう抜きにされるのがよほど嫌なのか、その理由は分からないが、山岳やスプリントの計測区間が現れると自然にムクっと立ち上がり、その結果としての区間タイムや順位まで確認するようになった。人間というのは変わる。環境次第でいくらでも。

 なにより高い負荷から解放された束の間に、ちょっとした快楽が訪れることに気付いてしまった。つらい山岳路が大好きな人を「坂バカ」と言ったりするが、だったらこっちは「負荷バカ」だと思う。齢57にして私もそんなバカになってしまったのかも知れません。

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